2023.06.02
前回に続き、理化学研究所の大野博司さんに、近年になって詳しいことが分かってきた腸内細菌と病気との関係性など、腸の最新の研究について聞きました。
新生活が始まる時季、子どもは入園・入学や、引っ越しで新しい園・学校への転入などで、食生活が変化するタイミングですよね。実は「食生活の変化」、腸の研究では注意したいことでもあるのです。
■前回記事『子どもは○歳で大人と同じ腸内環境に!? 「免疫」と「腸内環境」との深い関係』はコチラから
教えてくれたのは…
大野博司さん
医学博士。千葉大学大学院医学研究科助教授、金沢大学がん研究所教授、理化学研究所免疫アレルギー科学総合研究センターチームリーダー、神奈川県立産業技術総合研究所腸内細菌叢プロジェクトプロジェクトリーダーを歴任。2018年から理化学研究所生命医科学研究センター粘膜システム研究チームリーダー(現職)。専門は腸管免疫学。
─太りやすい体質と腸内環境、どう関係しているのでしょうか︖
腸内細菌は、人間の体では吸収できない「多糖類」(デンプンなど)を、吸収しやすい「単糖類」(ブドウ糖など)に分解します。この機能は約50年前まで、飢餓の危機と隣合わせの時代には活躍するものでしたが、飽食の時代の現代では肥満につながりがち。腸内細菌の構成は人それぞれですが、単糖に分解する菌が多いと肥満になりやすく、少ないと太りにくい傾向があると考えられています。
─具体例を教えてください。
アメリカで多く、重症化率が高い、ある消化管感染症で有効とされている治療法に、「糞便微生物叢移植」(健常な人の便中にいる腸内細菌を移植する治療法)があります。ある女性が、肥満気味の娘の腸内細菌で治療を行ったところ、その女性も肥満になったという例が報告されています。
※糞便微生物叢移植は、日本では潰瘍性大腸炎などに対して臨床治験が実施されています
─腸内細菌の研究で注目されているのはどういった分野になりますか︖
「病気」との関係です。「糖尿病」などの人の腸内細菌を無菌マウスの腸内に植え付けると、同じような症状になることから、腸内細菌が病気の症状の原因になることが分かっています。ただ、「なぜ、病気に関わる腸内細菌になったのか」はまだ研究途中で、はっきりとは分かっていません。考えられることとしては、抗生物質を飲んだり、生活環境が変化したりなどで、腸内細菌が変わり、病気が発症したということです。
大人になってからなる病気は、「遺伝的素因」と「環境要因」が合わさって発症する場合が多いのですが、その環境要因の重要な要素が「腸内環境の変化」だと言われています。「一人暮らしを始めて食生活が変わった」などは、大きな「腸内環境の変化」になるので要注意です。
腸内細菌の研究は、長く全容が分からない状態が続いていましたが、10年~15年ほど前から急速に進化。今や腸内細菌の研究は世界的にも注目され、最新研究ではその機能・働きが解き明かされつつあります。
─腸内細菌との関係が分かってきている病気について教えてください。
胃がんや大腸がん患者は、腸内で炎症が起きやすいこと、遺伝子を傷付ける物質を作る腸内細菌を持っていること、腸内細菌が異常な発酵をし、発がん性のある硫化水素が発生すること、などが報告されています。
動脈硬化も腸内細菌の影響があると言われています。筋肉に多く含まれる成分をトリメチルアミン(TMA)に変換する腸内細菌を持つ人は、脂肪の少なく筋肉質な赤身肉を多く食べることで、動脈硬化になる危険が高まります。
現在、腸内細菌が多彩な病気と深く関係していることが判明してきています。病気治療の分野で、腸内細菌は大きなポテンシャルを持っていると言えるでしょう。子どもたちの将来のためにも、今後の研究に期待したいものです。
─今、私たちが良い腸内環境に向けてできることを教えてください。
食物繊維や野菜をバランス良くとり、生活習慣を整えることです。また、家族のこれから先の健康のためにも、腸内細菌や腸内環境の最新情報について、常にアンテナを張っておいてください。
制作/あんふぁん編集部
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